大浦家・上津役家日記~R2.5月号~

皆さんこんばんは(●´∀`)ノ
あきひこです。
非常事態宣言解除されたと思いきや、
北九州では早々に第2波。
しかも第1波よりも激しい波( ;∀;)
やはりワクチンや薬が出来るまでは
現在の警戒態勢を継続するしかないようです。
コロナにより苦しい、悲しい、辛い思いをしている方々が
沢山いる事に改めて想いを馳せ、
自分の行動に細心の注意を払い、
明るい未来が少しでも早く戻ってくるよう、
みんなで頑張って行きましょう!
では、今月も宜しくお願い致します。

「 どんと諦観 」

失敗ではない。
うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ。
トーマス・エジソン
 
お金の事や仕事の事、
人間関係など、
生きていると必ずぶつかる、壁。
自分の力だけではどうにもならない壁もあれば、
自分次第で乗り越えられる壁もあります。
今回は、自分次第で乗り越えられる壁についてのお話し。
壁は、大抵の場合が、
自分自身が作り出したものなのではないかと思います。
同じ環境や同じ状況に置かれても、
壁を感じる人もいれば、
全く感じない人もいます。
ピンチをピンチと思う人もいれば、
ピンチをチャンスと思う人もいる。
冒頭のエジソンの言葉も同様。
私なら1万回も実験に失敗したら、
心が挫けるものですが、
やはり天才。
考え方が違います。
でもなるほど彼の言う様に考えると、
たちどころにその壁は無くなってしまうのかもしれません。
このように自分の考え方で壁を
創らない事も出来ますが、
仮に壁を創ってしまっても、
努力して乗り越えるという方法もあります。
私としては、
全てポジティブに考えられるわけではないし、
壁を乗り越えた時の達成感や、
自分自身への自信になる、
後者の方が良いのではないかと思っています。
私達の仕事においても沢山の壁が存在しますが、
その中でも私達の仕事特有な壁として、
認知症とどう向き合うかという壁があります。
詳しく言うと細かすぎてわかりずらいので、
わかりやすい極端な例をあげると、
お出掛け(一般に言う徘徊)の症状のある方がいて、
何度も施設から出てしまう状況があったとします。
その時、施設側がどの時点で玄関に鍵をかけるのか。
という、判断の壁が生まれます。
月に1回そういう事があった時点で鍵を掛ける様にするのか、
週に1回あれば鍵を掛けるのか。
その判断は施設により様々。
その様な方がいなくても、
開設時から鍵をかけるようにしている所もあります。
もうひとつ。
暴力行為のある方がいたとして、
それがどの程度であれば受入れを拒否、
または退去をお願いするというのもひとつの壁だと言えます。
ただ、どちらにも言えるのが
今例にあげたこのふたつの方法は、
壁を乗り越えたのではなく、
壁を相手へ押し付けただけだという事。
施設側にとっては判断を実行すれば壁は無くなります。
しかしその一方で、
その判断を実行したがために、
利用者本人やその家族に新たな壁を生む事になるからです。
これは壁を無くすでもなく、
壁を乗り越えるでもなく、
壁を相手へ押し付けるだけなので、
何の喜びも達成感も、自信も生まれる事はありません。
うちの家族(入居者)にも、
似たような症状のある方はいますが、
スタッフ全員で知恵を出し、
協力して壁を押し付けずにやるようにしています。
大変ですが、そのおかげでスタッフも力をつけ、
自信を持って働く事が出来る様になり、
現在の大浦家、上津役家があります。
誰かが言っていました。
必ず成功する方法とは。
それは、
『成功するまでやり続ける事だ。』と。
なんじゃそりゃと思われるかもしれません。
私も始めは思いました。
でもよくよく考えてみると、
これは裏を返せば、
自分をどれだけ信じられるか。
という事を言っているのではないかということに思い至りました。
どんな困難や失敗があっても、
自分の考えや追い求めた道を信じ、
答えを追い求め、継続する心の強さ。
それを持つ者こそ成功に辿り着ける。
そう考えるとなるほどと納得し、
これからもこのやり方を貫き、
出来る限りもがき、あがき、粘り、
諦めずに壁を乗り越える事にこだわろう。
そしてそんな自分を信じぬこう。
そう改めて思ったのでした。
最後にうちのスタッフが壁を乗り越えた時のお話しをひとつ。
上津役家の家族であるヒロさん。
彼女はレビー小体型認知症。
物忘れはもちろんですが、
幻覚や妄想などの症状があります。
日によって軽いものだったり、
強いものだったりします。
明るい幻覚や妄想なら楽しくて良いのですが、
症状が強い時は何故か決まって悪い妄想だったりします。
この日もそうでした。
朝から機嫌が悪く、仏頂面の彼女は、
スタッフの声掛けにもそっけなく、
何やらぶつぶつと口の中で不満?を言っています。
その後もスタッフが時間をおいて声を掛けても変わらず。
それどころか、
どんどん周囲への当たりがキツくなってきていました。
この様な時は、触らぬ神に祟りなし。
スタッフは、彼女の気持ちが落ち着くまで、
様子見の構えで待ちます。
しかし、ひとりのスタッフが覚悟を決めて行動を起こします。
「なんでそんなに怒ってるの?」
『あんた達には言わん!あっち行き!』
「言ってくれなわからんやん!」
『いいけ向こう行き!』
案の定、良い反応は返ってきません。
普通であれば、やっぱり駄目かと諦めて他のスタッフと同様、
様子見する所。
しかしこのスタッフは諦めませんでした。
追い払われても追い払われても、
またすぐに彼女の元に来て、
同じ問答を何度も繰り返します。
そして、何度目かの押し問答の末に、
彼女の反応に変化が現れます。
『あんた本当にしつこいね。
 じゃあ教えてやるけん紙とペンを持ってきなさい!』
「わかった!すぐ持ってくる!」
その後、紙とペンを持ってきたスタッフとイスに座り、
紙に私の言うとおりに書きなさいと指示した彼女。
わかったと言って、彼女の言う様に紙に書きます。
内容は、
『○○が○○円。』
『○○が○○円。』
といったもの。
彼女が怒っていたのは、
紙に書いたこの金額を自分が周囲の人間に貸しているが、
全然返してくれないからという事でした。
スタッフは良く話しを聞き、
それはひどいと同調し、
自分が必ずお金を返してもらえるようにする!と買って出ます。
このやり取りの中で、
自分の気持ちを吐き出す事が出来た彼女は、
どんどん気持ちが穏やかになっていきました。
そして、最終的に
『あんたに話せて良かった。』
と言って、やっといつもの笑顔を取り戻しました。
この瞬間、このスタッフは
彼女の心の壁を乗り越える事に成功したのです。
この話をスタッフに聞き、
なぜそんなに粘る事が出来たのか尋ねてみた所、
ヒロさんは男性スタッフに対しては、
自分の孫と勘違いする事もあり、
当たりが良く、
お風呂の介助なども比較的スムーズに出来るのに対し、
女性スタッフが相手だと中々手こずると言う状況があり、
自分とヒロさんの間にはまだ距離があると感じていたそう。
それに加え、
「男だから、女だから、AさんだからBさんは言う事を
 聞いてくれる。自分が出来ない理由に、
 その言い訳を使うのが一番嫌い。
 相手は人間。
 始めに入りやすい入りにくいはあっても、
 とことん向き合えば必ずいつか分り合えるはず。
 頑張って向き合って信頼関係を築いた介護者の努力を
 何もわかっていないから、その言い訳だけは絶対許せない。」
いつか私がそう話した事も頭をよぎり、
今の出来ない自分が悔しくて、
絶対にこの壁を乗り越えてやろうと思ったのだそうです。
相手は認知症。
明日になれば全て忘れてまた元通り壁が立ちはだかる。
この壁を乗り越える事に何の意味があるのか。
そう思う方もいるかもしれません。
しかし実際はそうではありません。
この日を境に、
ヒロさんのこのスタッフに対する反応は激変したそうです。
自分に対して笑顔で話してくれる事も増え、
お風呂もスムーズに入ってくれるようになったのだそうです。
本当に不思議な事ですが、
認知症であっても心を通わせ、
信頼関係を築く事が出来るのです。
私も何度も経験があるので、
間違いありません。
これは、
相手が認知症の方であっても信頼関係は築けると信じ、
諦めずにぶつかり続け、
乗り越えた者にしか得られない実感。
そして喜びです。
認知症の方、
特に周囲の人が中々理解できない大変な症状のある方ほど、
信頼関係が築けた時の喜びは大きく、
また結びつきも強くなります。
それを知れば知るほど、
この仕事でしか得られない喜びに、
認知症介護から離れられなくなってしまうのです。
最後に。
この話を書こうと決めた時に、
ふと、昔読んだ漫画のセリフを思い出したので、
皆さんに贈ります。

『人の足を止めるのは絶望ではなく諦観(あきらめ)、
 人の足を進めるのは希望ではなく意思』